鍼灸師が理学療法士と同じ患者を話せるようになる「解剖の共通言語」:起始停止と走行から始める
鍼灸師と理学療法士が同じ患者について話すと、言葉が噛み合わないことがあります。経絡と経穴で語る側と、筋と関節で語る側。同じ体を見ているのに、翻訳が要る状態です。
共通言語になるのは、筋の起始停止と走行です。これは鍼灸の国家試験にも含まれる解剖の範囲であり、新しく覚えるものではありません。覚えたものを「患者の体で指し示せて、説明できる」状態にするだけです。
「覚えている」と「説明できる」の差
藤井翔悟の膝痛の指導動画では、経験のある治療家に対しても「大腿直筋の走行をまず知らないとダメ」と言い、「丸暗記してもあかん」「まず1語ずつ調べる。AIに聞いてもいい」と指導しています(出典1)。暗記した名前と、患者の体の上の位置を結び直す作業が、共通言語を作る作業です。
鍼灸師にとっては、経穴の位置を骨度法で取る訓練と同じ種類の作業です。骨の目印から距離を取る、という手順は共通しています。
3つの筋で共通言語を作る
動画で扱われている3つの筋を例にします(出典1)。
| 筋 | 起始 → 停止 | 骨の目印 | 動画での扱い |
|---|---|---|---|
| 大腿直筋 | 下前腸骨棘 → 膝蓋骨を経て脛骨粗面 | 膝蓋骨の上縁 | 受講者に走行をたどらせ、見つけた瞬間に確認 |
| 中間広筋 | 大腿骨前面 → 膝蓋骨 | 大腿直筋の下層 | 「大腿直筋の下にある。大腿四頭筋の一つ」と層を説明 |
| 後脛骨筋 | 下腿後面深層 → 舟状骨ほか | 内果の真ん中から下 | 「グリッとした腱」を持ち、緩む手応えを確認 |
この3つを、患者の体で「ここからここまで」と指でなぞりながら言える状態を作ります。理学療法士と話すとき、この言葉が通じます。
鍼灸に、徒手の評価を足す
鍼を打つ場所を決める前に、手で左右差を確かめる。その評価の考え方を無料動画で確かめてください。鍼灸師の受講者も多いセミナーです。合わなければブロックで解除できます。
LINEで無料動画を受け取るセミナーの日程を見る鍼灸師が共通言語を持つと起きること
- 他職種との連携が言葉で成り立つ。 「右の大腿筋膜張筋が硬い」と言えば、理学療法士にもトレーナーにも伝わる
- 患者への説明が、経絡の言葉と筋の言葉の両方でできる。 患者がどちらに納得するかを選べる
- 徒手の評価(左右差・触診)を鍼灸の前に足せる。 前の記事で書いた「手で評価する工程」の土台になる
1か月の作り方
- 週に1つ、筋を決める(動画の3つから始める)
- 起始・停止・走行を調べ、自分の言葉で説明文を書く
- 自分の体、家族、同僚の体で、骨の目印からその筋をなぞる
- 左右で硬さを比べ、差を一文で書く
- 同僚か勉強会で、同じ筋を触ってもらい、所見が一致するかを確かめる
5つ目が、一人では確かめられない部分です。ここだけは人の手が要ります。
注意点
- 経絡・経穴の体系を筋の言葉に置き換える話ではありません。両方を持つ、という話です
- 鍼の選穴そのものはこのサイトでは扱いません
- 解剖の説明は、患者に効果を約束する言葉にしないでください。「ここを見ます」「ここが硬いです」までです
まとめ
- 鍼灸師と理学療法士の共通言語は、筋の起始停止と走行
- 覚えているものを「患者の体で指し示して説明できる」状態にする
- 大腿直筋・中間広筋・後脛骨筋の3つから、週1筋で1か月
- 一人で確かめられない部分(所見の一致)は、人の手を借りる
次の記事では、鍼灸の施術の前後に「左右差を触って確かめる」工程を置く具体的な手順を扱います。
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- 藤井翔悟「膝の痛み」指導動画の文字起こし(大腿直筋の走行確認、中間広筋の位置、後脛骨筋腱の触り方、「丸暗記してもあかん」「1語ずつ調べる。AIに聞いてもいい」の指導):株式会社藤井翔悟事務所 内部資料